山田詠美はしばしば作品の中で六本木のことを描いている。
しかし、そこに描かれた六本木は、今の六本木ではなく、詠美がよく遊んでいた時代、つまり1980年代の六本木である。すっかり様変わりしてしまったけれども、当時の六本木を偲びながら歩くのも悪くない。

現在、材木町という町名は残っていないが、お店の名前や商店会(六本木材木町商店会)などに名前が残っている。上の写真は中国大使館近くの「材木町 鮨 奈可久」の看板。

六本木ヒルズの上の歩道から撮った写真。全体を見回せることができる。はたして“in short?”のモデルとなったお店は一体どのへんにあったのだろうか?などと思いながら交差点から下を眺めるのもまた楽しい。

現在この交差点は複雑な五叉路になっている。そのために、昼夜を問わず車がひっきりなしに通っているし、高速道路もあり、にぎやかな雰囲気が漂っている。
上の写真はいずれも六本木ヒルズを背にして撮ったもの。
(撮影日:2010/10/29)

店の名は、“in short?”。六本木のはずれは材木町の交差点近くにある、R&B愛好者御用達の小さなクラブだ。

from「GIと遊んだ話」『タイニーストーリーズ』

作品の中に登場する「材木町」とは、六本木ヒルズ近辺のことを指す。
この近辺が材木町と呼ばれるようになったのは、明治二年の頃のこと。もともとは龍土町の一部だったために、龍土材木町となったのが始まり。この近辺に材木商が多く住んでいたため、というのがそのいわれらしい。
山田詠美が遊んでいたころは、まだ六本木ヒルズもなく、このあたりはまさに「六本木のはずれ」的な雰囲気を醸し出していたと思われる。近くには六本木公園や六本木WAVEなどがあった。
今は詠美の作品「ひざまずいて足をお舐め」にも登場する麻布警察やサイン会でもおなじみの青山ブックセンターなどがある。

六本木駅方面を臨む。この交差点はかなり広いので、歩行者なども安心して歩くことができる。また、地下道があるが、これは単に向こう側に行くための地下道で、六本木ヒルズと繋がっているわけではない。横断歩道があるのに、なんでこんな無駄な地下道を造ったのかが疑問ではあるけど…。