『風葬の教室』
初出誌 各項目参照
<単行本>
河出書房新社 1988年(昭和63年)3月15日発行
167頁/ISBN:4-309-00502-0
<文庫本>
河出文庫 1987年(昭和61年)11月10日発行
183頁/ISBN:4-309-40312-3
解説/島田雅彦「「聖なるあばずれ」へのオマージュ」
<文庫本>
新潮文庫 1998年(平成10年)5月25日発行
208頁/ISBN:4-10-103618-7
解説/「蝶々の纏足」「こぎつねこん」併録
直木賞受賞後「文藝」に発表された中編小説。父親の仕事の関係で転校することが多かった山田詠美自身の体験に基づいて書かれている。

この作品の大きな主題はイジメである。小学生特有の、と言うよりも、日本の社会の縮図とも言える小学生の間のよそ者差別に端を発するイジメが、杏の冷静な目を通して「です・ます」調で書かれている。

私自身が、彼女と同じようにいじめを受けたことがあるので、そういう読者には見につまされる作品であろう。また、今まさに同じ境遇にいるような子供たちにも是非読んでもらいたい作品である。

なお、この作品は平林たい子賞を受賞している。

表題作の他に「こぎつねこん」を併録。

「風葬の教室」初出誌 「文藝」1988年春季号(2月) 49〜79頁
転勤の多い仕事に就く父親の子供である本宮杏は、小学5年生にしてすでに自分が他の大勢の子供たちと違っていることを知っていた。転校先の小学校で杏は少しずつクラスメイトからいじめを受けるようになった。いじめが少しずつエスカレートし、杏は自殺まで考えたが、姉が両親と話しているのを聞いているうちに死ぬ気を失ってしまう。そしてその時、姉が話していたように、自分をいじめる子たちを心の中で殺していくことを覚える。

主な論文に以下のものがある。
また、単行本の帯には竹田青嗣氏による共同通信社文芸時評が掲載されている。

*「フェティシズムの誕生―『風葬の教室』」
  田中実 『国文学解釈と鑑賞』 91年8月号 173〜182頁

*「「風葬の教室」<山田詠美>を授業で読む」
  深谷純一 『日本文学』 93年4月号 66〜70頁

*「『風葬の教室』(山田詠美)を読む−少女「杏」の死と再生の物語−」
  益田正子 『日本文学』 95年6月号 47〜56頁

「こぎつねこん」初出誌「新潮」1988年1月号 203〜213頁
大人になった「私」が男に抱かれながら、幼い頃の思い出を回想する小作品。

この作品には私が、これをはじめて読んだ当時務めていた紅茶会社のブランド名が出てくる。それを知った私はいてもたってもいられず、本人にファンレターを送った。二週間後、本人から返事のカードをいただき、そこには「君はきっと素敵な男の子なんだろうね」と書かれており、感動した。そこから私と山田詠美の関係が始まった。

数年後、私は本人と直接お会いするようになるのだが、彼女が他の編集者に私の事を紹介する時、必ず「この子ねー、とても素敵なファンレターをくれたんだよー」と話してくれるのだが、そのたびに私はなんだか、こそばゆい気持ちになってしまう。私にとっては思い出深い作品である。