『フリークショウ』
初出誌 各項目参照
<単行本>
角川書店 1989年(平成元年)4月30日発行
217頁/ISBN:4-04-872535-1
あとがき 218〜221頁
<文庫本>
角川文庫 1993年(平成5年)1月25日発行
208頁/ISBN:4-04-1711005-7
あとがき 209〜212頁 解説/酒井順子
<文庫本>
幻冬舎文庫 1997年(平成9年)6月25日発行
210頁/ISBN:4-87728-477-X
あとがき 211〜214頁 解説/西木正明
『月刊カドカワ』に1話完結の形で連載された連作短篇小説集。

今はなくなってしまった赤坂のクラブ「ムゲン」や六本木の「エンバシィ」を舞台にしており、山田詠美のクラブフリークスに対する愛情が感じられる。『放課後の音符』は高校生が主人公であったが、この『フリークショウ』は大人のための『放課後の音符』といったところであろうか。各作品のに登場する人物が次の作品の主人公となるという構成も面白い。

「ルーシィ」 初出誌 「月刊カドカワ」1987年8月号 66〜77頁

普段は地味なOLをしている沙織は、最近、金曜日の夜になるとドレスアップをして、魅力的な黒人の男たちの集まる赤坂の「ムゲン」に行くようになった。しかし、彼女はまだ黒人の男と寝たことがなかった。ある日、彼女は強烈な個性の持ち主のルーシィと知り合い、ひょんなことから彼女の住む広い部屋に連れて行かれる。そこでマークという黒人の男と知り合う。

「マーク」 初出誌「月刊カドカワ」1987年9月号 56〜64頁
いつも恋に対して真剣すぎるマークは、振られることの名人だった。ネイビーに入り、横須賀に来た彼は、日本の女性に期待していた。マークは「ムゲン」でリサと知り合う。彼女は彼の想像していたような日本人女性とは全く違っていたが、彼は彼女に恋をした。

「クッキー」 初出誌「月刊カドカワ」1988年1月号 91〜101頁

クッキーが六本木のはずれにあるクラブ、「ソウル・エンバシィ」で働き始めて一年になる。店長は、大阪の家を逃げ出してきた彼女を見て、最初は「あんたに勤まるかなぁ」と不安がってが、確かに彼女にとってそのクラブは未知の世界だった。しかし、彼女は少しずつその世界に愛着を感じるようになっていった。

「ミミ」 初出誌「月刊カドカワ」1987年2月号 96〜107頁
ミミとリエコは「ムゲン」の常連客だった。彼女たちは「ムゲン」にたむろしているようなバンドのグルーピーたちと自分は違う人種だと思っていた。ミミはある夜、24時間営業のハンバーガースタンドでスティーブと知り合う。彼はバンドのドラマーだった。

「リエコ」 初出誌「月刊カドカワ」1987年3月号 120〜130頁
ブラザーとばかり付き合っていたリエコは、ひょんなことから「ムゲン」で働く日本人のウェイター、ケンに恋をするようになった。恋をする条件に肌の色や国籍などはあまり関係がないという詠美のポリシーが感じられる。

「ポール」 初出誌「月刊カドカワ」1987年5月号 64〜74頁

ポールは悪気のない女垂らし(レディスマン)で、多くの女から愛されていた。彼はマイを抱きながら、数年前に付き合っていた嫉妬深いマサミのことを思い出していた。

「マイ」 初出誌「月刊カドカワ」1987年6月号 76〜86頁
銀座の高級クラブでホステスとして働いているマイは、色々な種類の日本の男たちを見てきたが、心の中にある壁に、きりで小さく穴を開けるほどの男にすら会ったことがなかった。

「ナルオ」 初出誌「月刊カドカワ」1987年7月号 168〜178頁
ナルオは黒人の美しい女性アイリーンに夢中だ。彼は独立記念日の基地の中でアイリーンと知り合った。彼女はまだ17歳だったが、魅力的な女性だった。