『ジェシーの背骨』
初出誌 「文藝」1986年(昭和61年)夏季号 64〜97頁
<単行本>
河出書房新社 1986年(昭和61年)7月10日発行
159頁/ISBN:4-309-00440-7
<文庫本>
河出文庫 1987年(昭和62年)8月20日発行
174頁/ISBN:4-309-40200-3
解説/竹田青嗣
<文庫本>
角川文庫 1993年(平成5年)3月25日発行
175頁/ISBN:4-04-171006-5
解説/小川洋子
新潮文庫 1986年(平成8年)11月1日発行
314頁/ISBN:4-10-103617-9
解説/浅田彰 「ベッドタイムアイズ」「指の戯れ」併録
山田詠美の第3作目にあたる小説で、前2作に比べると若干長い。

ココと同居人であるリック、そしてその連れ子であるジェシーの3人をめぐる話で、これは5年後に発表された初の本格的長篇小説『トラッシュ』に続いていく。

「トラッシュ」では主にリックとココの関係が軸となっているが、この「ジェシーの背骨」はココとジェシーの関係が中心に描かれている。そのため、「トラッシュ」と比べると登場人物は極力少なく押さえられ、舞台も3人の住む家が中心となり、地名などの具体的な固有名詞は一切出てこない。

詠美は後に「放課後の音符」や「僕は勉強ができない」といったティーンエイジャーを主人公にした作品を書いているが、思春期の揺れ動く心情をクールに、静かに、淡々と描くのが得意だ。最初はココに対して冷たい態度を取っていたジェシーと子供の扱い方を知らずに空回りばかりしているココが喧嘩をしたり仲直りしたり、を繰り返しながら少しずつ歩み寄っていく過程がリアルで面白い。

しかし、Amy=ラブストーリーと思っている人には物足りない部分もあるので、そういう人は『トラッシュ』の方がオススメ。