『蝶々の纏足』
初出誌 「文藝」1986年(昭和61年)特別号 198〜225頁
<単行本>
河出書房新社 1987年(昭和62年)1月20日発行
130頁 ISBN/4-309-00461-X
<文庫本>
河出文庫 1987年(昭和62年)8月20日発行
143頁/ISBN:4-309-40199-6
解説/富岡幸一郎
<単行本>
新潮文庫 1997年(平成9年)3月1日発行
208頁/ISBN:4-10-103618-7
解説/吉本由美 「風葬の教室」「こぎつねこん」併録
山田詠美の第5作目の作品はそれまでとは少し毛色の違った中篇小説である。

テーマは「少女」。といっても、そこに描かれているのは、男たち、あるいは大人たちが想像するような可愛げのある「少女」ではなく、むしろ正反対の少女のいやらしさを詠美流のタッチで描いている。

この解説を書くにあたり、久々に読み返してみたのだが、エリ子にムカムカしてきて、女に生れてこなくて良かった!と思ってしまった。

山田詠美の作品のすごいところは、離陸と着地にある。つまり、オープニングの文章が様々な過程を経て、エンディングに繋がるのだが、そのエンディングが見事にすぽっと着地するような感じがするのだ。それは主に短篇あるいは中篇小説で顕著にあらわれており、この作品でも見事な着地をみせている。

詠美自身、インタビューなどでもオチのない小説は書く気がしないと明記しているが、そこが詠美らしさであり、いわゆる日本のオーソドックスな小説のスタイルを踏襲しているのだ。

タイトルに注目してみると、ここまでの5作はいずれも身体の一部がタイトルにあらわれている。「目」「指」「背骨」そして、この「足」、さらに詠美はこの後に「ひざまずいて足をお舐め」と「足」をタイトルに入れている。このように、詠美の身体へのこだわりはタイトルにも如実にあらわれているのだ。

主な論文に以下のものがある。

*<他者>へ再び―『蝶々の纏足』―
  田中実 『国文学論考』 1992年3月号 1〜12頁