『ハーレムワールド』 |
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書き下ろし |
<単行本> |
講談社 1987年(昭和62年)2月8日発行 |
219頁/ISBN:4-06-202836-0 |
あとがき 220〜221頁 |
<文庫本> |
講談社文庫 1990年(平成2年)4月15日発行 |
197頁/ISBN:4-06-184665-5 |
あとがき 198〜200頁 解説/阿部譲二 |
山田詠美にとっては五作目にあたるこの小説は、初の書下ろし小説であり、また河出書房以外で書いた作品の第一作目となる。 自由奔放なサユリに振りまわされる男たちを、一見コミカルに描いているが、そこに浮き上がるのは、一人の女性の真摯で貪欲で純粋で素直な性に対する姿勢である。 サユリを取り巻く登場人物たちも魅力的で、サユリにとっては腹心的存在のティエン、サユリを想うあまり仕事が手につかなくなるクラウス、間抜けだけど憎めない純日本男児のコバヤシ様、サユリのために金を盗み逃げて来たスタン、そんなスタンをかくまい、同居しているうちにサユリ好みのいい男になっていくシンイチ、などなど、まさにこの作品はサユリを取り巻くハーレムワールドなのである。 特に私が好きなシーンは、ティエンがサユリに呼ばれていった海辺の別荘で、サユリが夕陽に照らされた海に欲情するシーン。初めて読んだ時は、本当にドキドキしたし、今でもそのシーンは平常心では読めない。そして、ラストでサユリがティエンに抱かれるシーンで、ほっとひと安心してしまうのも、今でも変らない。 この作品は何度読んでも同じ体温で読めるのである。 |