『快楽の動詞』
初出誌 各項目参照
<単行本>
福武書店 1993年(平成5年)12月10日発行
194頁/ISBN:4-8288-2465-0
あとがき 195〜197頁
<文庫本>
文春文庫 1997年(平成9年)4月10日発行
185頁/ISBN:4-16-755803-3
あとがき 186〜189頁 解説/奥泉光
日本語の持つ独特の言い回しは時として滑稽に聞こえることがある。そのような言葉をテーマにした異色短編集。いずれの作品も『海燕』に連載された。

この作品集に収められた作品は、エッセイと小説の中間のようなものが多い。詠美が今までエッセイやインタビューなどで述べてきた様々な日本語の不思議な点を時におかしく、時に真面目に分析しているところがこの作品集の面白さである。

「快楽の動詞」 初出誌 『海燕』 1992年3月号140〜148頁
なぜ人は快楽の極みに達する際に、「行く」や「死ぬ」といったような言葉を使うのか、を面白く、しかし真面目に分析している。そして、赤坂見附のクラブえ出会った年上の女性との思い出を回想する。

「否定形の肯定」 初出誌 『海燕』 1992年5月号76〜85頁
すきっとさわやかで、馬鹿真面目な三郎くんと、その三郎を何とかモノにしたいと思っている京子を通して、日本語の複雑さを描いている。

「駄洒落の功罪」 初出誌 『海燕』 1992年8月号78〜86頁
世の中にはびこる駄洒落人間を処刑するモモを描く。

「逆説がお好み」 初出誌 『海燕』 1992年12月号108〜116頁
知的な男が好きな幸子は、いつも振られてばかりいる。女友達の和美の知り合いに作家がいることを知った彼女は、様々な本を読み始める。そこである発見をする。

「文体同窓会」 初出誌 『海燕』 1993年2月号16〜24頁
文体同窓会にこっそり忍び込んだ話し言葉のある香とまま代の話。文体を擬人化している。私は個人的にこの話は好きなので、詠美さん本人にそのことを伝えたら、泣き真似をしながら「う、う……、あの話はねー不遇なのよ。誰も理解してくれなかったの、ありがとう……」と言われた。

「口の増減」 初出誌 『海燕』 1993年5月号174〜183
擬人化したへらず口とふえず口の往復書簡がベースとなっている。

「ベッドの創作」 初出誌 『海燕』 1993年8月号154〜163頁
ホテルのスウィートにいる男女のカップルを描く。女は頭の中で、今の二人の状況をAとBという違うタイプの表現で描く。男性週刊誌のポルノ小説風のAと、詠美小説風のBの違いが面白い。

「不治の快楽」 初出誌 『海燕』 1993年10月号242〜251頁
蛾万と不良地、そして津羅井の三人の対談形式で、文学における快楽について考える。さらにその対談を読んでいるヨイヨイ、ヌクヌク、イクイクの三人の会話も面白い。