『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』
初出誌 各項目参照
<単行本>
角川書店 1987年(昭和62年)5月6日発行
212頁/ISBN:4-872462-2
あとがき 213〜215頁
<文庫本>
角川文庫 1987年(昭和61年)11月10日発行
214頁/ISBN:4-04-1711001-4
あとがき 215〜217頁 解説/富岡幸一郎
<文庫本>
幻冬舎文庫 1997年(平成9年)6月25日発行
200頁/ISBN:4-87728-475-3
あとがき 202〜204頁 解説/青山南
山田詠美初の月刊誌連載小説。連載とはいっても、1話完結なので、連作連載となる。このスタイルの連載は詠美がもっとも得意とするもので、「ぼくはビート」「24.7」「120%COOOL」「4U」「マグネット」に受け継がれていく。あまりにも有名なので、わざわざ明記することもないが、この作品で第97回直木賞を受賞。しかし、受賞後平凡パンチに昔のヌード写真が掲載されたり、(詳細は『私は変温動物』「平凡パンチに殴り込むの記」頁参照)つきあっていた男が婦女暴行で逮捕されたり、と作品以外のところでマスコミに書きたてられた。

作品のタイトルはすべてソウル・ミュージックからとられたもので、もちろん内容もその曲に相応しい恋物語だ。
「ひとりの男を愛すると三十枚の短編小説が書ける」というあとがきは有名。
詠美のソウルに迫る、ファン必読の書の一冊。

「WHAT'S GOING ON」初出誌 「月刊カドカワ」1986年4月号 38〜48頁

今は夫と静かな生活を送っているアイダは久しぶりに来たクラブの化粧室の前でかつての男、ロドニーに再会する。彼は夫と知り合う前に一番最後につきあった男だった。しかし、ロドニーがジゴロであることを知ったアイダは、彼と別れ、結婚することを決意したのだった。

「ME&MRS.JONES」 初出誌「月刊カドカワ」1986年5月号 310〜320頁
ハイスクールに通うウィリーは、週に二、三回働いているストアで、偶然ミセス・ジョーンズと知り合う。彼女はウィリーたちの間では尻軽女で有名で、彼女と寝たことのある男たちは仲間から英雄とされていた。ウィリーは彼女の大好物の甘いものを携えて彼女の許へ通うようになるが、ある日、来ないでと言われる。彼女は言う。「男の体を求めるのは最初の半年でいいの。それから後は心が欲しい」

「黒い夜」 初出誌「月刊カドカワ」1986年6月号 278〜288頁

二年越しの婚約者のいるティナは週末ごとにクラブに行き、親友のグロウニィと共に男を見つけてホテルに行く生活を続けていた。そんな時に身長が7フィートもあるジョニーと知り合う。ティナは一度きりのつもりだったが、2人はその後も何度か会う。しかし、東部にいるティナの婚約者が夏休みで帰ってきてから、ティナは彼からの電話を取らなくなる。ある夜、グロウニィから、ジョニーが泥酔していることを聞き、彼に会いに行く。

「PRECIOUS PRECIOUS」 初出誌「月刊カドカワ」1986年9月号 272〜282頁
クラスメイトから変人扱いされている高校生のバリーは、あるパーティーでジャニールゥのイヤリングを拾う。それ以後、彼はいつでもジャニールゥのことを想うようになり、その姿はやがてクラスメイトたちには神秘的な大人の雰囲気を持った男の姿として映るようになる。そして、卒業パーティー(プロム)の前に彼女のポケットにひそかにフォンナンバーを書いた紙を忍び込ませ、彼女から電話をもらった。正装してプロムにでかけるバリーはいつのまにか「悪くない顔」になっていた。

「MAMA USED TO SAY」 初出誌「月刊カドカワ」1986年10月号 194〜205頁
フットボールの奨学金で東部の大学に進んだブルースが郷里のYOBOの店に帰ってくる。ブルースの父親YOBOは売春婦相手の酒場を経営していた。ブルースの両親は幼い頃離婚しており、YOBOはブルースが17歳の時にドロシーという女と再婚した。しかし、ブルースはふとしたことからドロシーを抱いてしまう。

「GROOVE TONIGHT」 初出誌「月刊カドカワ」1987年1月号 284〜294頁

DJをやっているカーティスは4年前デニスに惚れた。そしてデニスはカーティスの女になるが、彼女は座っているだけで男に嫉妬を起させる女であったために、ある時カーティスは彼女を殴り。2人は別れる。2人は4年ぶりに再会した。デニスはもうすでに結婚していた。

「FEEL THE FIRE」 初出誌「月刊カドカワ」1987年2月号 256〜266頁
交通事故で死んでしまった恋人のソニーを想いつづけるイヴァンを、ソニーの親友でもあるルーファスは慰めようとするが、彼女はなかなかルーファスに心を開かない。ある日、ルーファスはイヴァンが一人でソニーの思い出にふけっている様子を目の当たりにする。

「男が女を愛する時」 初出誌「月刊カドカワ」1987年3月号 244〜254頁
画家の私のアパートに、休暇中にマイアミで知り合った年下の男、ウィリー・ロイが不意に訪ねてくる。彼の傍若無人な態度に私は振り回される。詠美さんのエッセイによると、この作品は一番最後にできたもので、ホテルに缶詰になりながら数時間で書き上げたという。